鳥取大学で2021年9月下旬に行われた公開講座「「民藝」という美学 ~地域にひそむ新たな価値の発見~」を受講しました。
(画像は鳥取大学 公開講座「「民藝」という美学 ~地域にひそむ新たな価値の発見~」のパンフレットより)
今回はコロナ禍ということで、初めてオンラインで行われました。
民藝の面白い話をたくさん聞けた4日間でした。
22時間を超える民藝の講義
9月16日~19日の4日間で、全15コマ(各90分)の集中講義でした。
計算すると、合計で22時間以上になります。
そんなに長く民藝の話を聞ける機会はなかなか無いですよね。
民藝好きにはたまりません。
ちなみに、受講料は7,400円で、1時間あたりの金額考えると、とてもお得です(笑)
とはいえ、ずっとだと、疲れてしまいます…
大学のほうでGoogleドライブに講義の録画をしばらく保存してくださっているので、自分のペースで講義を受けられるようになっていました。
今回の公開講座の参加者は、約90人だそうです(鳥取大学の学生:10数人+一般:約80人)。
この人数が例年より多いのか少ないのかは知りませんが、オンラインということで、鳥取に行くのが難しい人や、講義に出るために仕事等を調整するのが難しい人でも参加できたのではないかと思います。
私も関東に住んでいて、鳥取に4日間滞在するのは少し難しいので、今回のオンラインという方法はありがたいなと思いました。
いろいろな先生から民藝の話が聞ける
メインの講師は、木谷清人先生です。
鳥取のご出身で、鳥取民藝美術館常務理事をされています。
主に鳥取民藝、吉田璋也について研究されるとともに、鳥取民藝の発展にご尽力されています。
2021年度の講師は下の画像のとおりです。
(画像は鳥取大学 公開講座「「民藝」という美学 ~地域にひそむ新たな価値の発見~」のパンフレットより)
複数の講師による講義で、民藝を多角的に考えることができました。
他にも、延興寺窯、牛ノ戸焼、因州・中井窯、国造焼といった鳥取民藝の窯元さんたちの話が聞ける時間もありました。
こういうきっかけで職人になったんだとか、新しいものを作ることに関しての話など興味深かったです。
また、吉田璋也は今でも地元の物づくりに影響を与えているんだなと感じました。
実験的民藝に取り組んだ吉田璋也のすごさ
今回、講義を受けて一番よかったと思ったのは、吉田璋也のことを詳しく知ることができたことです。
講義を受ける前も吉田璋也のことはちょっと知っていたけれど、講義を受けて、吉田璋也のすごさがわかりました。
柳宗悦の民藝の思想に憧れ、民藝を実践したいときに何をするべきか。
その多くをすでに吉田璋也が取り組んでいたことを知りました。
古作の発掘、新作民藝のプロデュース・デザイン、他から技術指導に来てもらうこと、販路開拓、「発表の場(民藝館)」「販売する場所(鳥取たくみ)」「使う場所(たくみ割烹店)」を作ること、名建築や名勝の保護活動など。
吉田の本業は医者(耳鼻咽喉科医)です。
多忙だったんじゃないかと思いますが、医師であることで地域の人の信頼も得やすかったでしょうし、資金面の安定もあったでしょう。
戦時中は中国北部へ応召されますが、戦後も活躍され、鳥取で出来ることはすべてやったんじゃないかというくらい活動されています。
民藝の人というと柳宗悦だけれど、柳の思想はなかなかとっつきにくいものだなと感じていました。
私自身、柳宗悦の思想を読んで、はて、現代にどう当てはめればよいのやら、と思うこともありました。
他方、吉田璋也は実際に取り組んだ活動が多くあるので、「こういうのが民藝活動なのか!」とわかりやすいように思います。
吉田の民藝活動は「実験」であり、「吉田の関わったものはすべて民藝」というふうな考えではないです。吉田が提示した民藝活動の可能性を学びつつ、例えば、「なぜ、結果として鳥取で家具を作る職人さんが激減してしまったのか」など、乗り越えないといけないものもあるように思います。
また、講義では、吉田璋也がデザインした民藝品が紹介され、「欲しいな~」なんて思いながら観ていました。
青と黒の釉薬が半分ずつかけられている「染分皿」、中国の椅子から影響を受けた「曲木肘掛椅子」や、小津安二郎も愛用していたという「伸縮式木製電気スタンド」など。
吉田璋也によって建てられた鳥取民藝美術館や吉田医院と自宅、阿弥陀堂も素敵です。
今は難しいけれど、いつか鳥取に行きたいなと強く思いました。
「芸術新潮 2021年10月号」は民藝特集。
鳥取民藝や講師の先生方も出てくるので、受けた人も受けたかったなという人にもおすすめです。