よりよい日々を

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東京国立近代美術館「民藝の100年」展に行ってきました

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東京国立近代美術館で開催されている、柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」に行ってきました。

民藝好きにはたまらない盛りだくさんの展示でした。

 

民藝運動の歴史をたどる展示

柳宗悦が雑誌『白樺』の活動をしていた頃から、柳没後の吉田璋也や柳宗理による民藝運動まで、民藝運動の歴史をたどる内容の展示でした。

 

民藝好きな人なら、「あっ、これがあの!」というふうに気づく品々があるかと思います。

私がそんなふうに思ったのは、

  • 『白樺』同人が送った浮世絵のお礼にロダンから送られた「ブロンズ彫刻三体」
  • 柳宗悦が朝鮮工芸の美に目覚めるきっかけとなった《染付秋草文面取壺》
  • バーナード・リーチが楽焼の技法で試作したスリップウェア皿《楽焼筒描ペリカン文皿》

など。

 

《染付秋草文面取壺》は思っていたより大きい壺だと感じました。

 

民藝館で観るのとは違うこと

民藝館の展示との違いを感じたのは、

  • 民藝運動の手法にフォーカスを当てる
  • 当時の関連する社会現象について紹介されていること
  • 説明文が多いこと

など。

 

なかでも一番の違いは「展示品の数が多いこと」だと思います。

「総点数400点超える」とのことで、盛りだくさんの展示でした。

 

それは有難いことなのですが、

コロナ禍だからなんでしょう、展示室内に座れる椅子(観る椅子はたくさんあります)が一脚もなかったことは、どうにかしてほしいなと思いました。

食事を理由とした途中退室も不可で、なかなか休めなかったです。

 

結構なボリュームなので、これから観る方は、配分を気にしつつ観るか、2回行くことをオススメします。

私が行ったときは、冒頭は熱心に観ている方が多かったのですが、中盤あたりで「まだあるの?」という声も聞こえたり、終盤は早歩きの方も多く見受けられました。もったいない…!

 

展示室の外には椅子があったので、たとえば展示室を二つの部屋に分けるなどして、途中で休めることができたらうれしかったです。

 

よかったものたち

いいものはたくさんありましたが、とくに自分が好きだと感じたのは、木工が多かったです。

  • 朝鮮の八角膳や箪笥
  • 柳宗悦と濱田庄司がイギリスへ行ったときに気に入って、たくさん買って帰ってきたウィンザーチェア
  • 柔和な表情の木喰仏
  • 囲炉裏に掛けられていたというが、それにしても大きい自在掛
  • 吉田璋也監修の椅子たち
  • 沖縄の垢取り(舟に溜まった水を汲みだす道具)

自在掛・吉田璋也が関わった椅子・垢取りは、丸々としていてなんだかかわいかったです。

 

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柳宗悦が愛用していた机と椅子。撮影可のスペースになっていました。

 

器はスリップウェアや流し釉の即興の自由な感じが好きで、

布はこぎん刺しの衣裳の気が遠くなるような細かさに圧倒されました。

 

また、柳宗悦や河井寛次郎、吉田璋也の着ていた服が展示されていて、「こんな人だったのかな?」と想像したり。

服は木のボタンひとつとっても、よいものでした。

 

民藝展の展示物は日常で使われていたものだけあって、何か持って帰りたくなります。

 

お皿が並ぶミュージアムショップ

特設ショップでは、交代で民藝のお店が出店しているようです。

私が行ったときは、銀座たくみさんでした。

 

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やちむん、小鹿田焼、琉球ガラスなど。撮影可でした。

 

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オリジナルグッズのエコバッグ、缶に入った飴など。

 

D&DEPARTMENTのスペースもあって、自分のところの本や素敵なデザインの生活雑貨などがありました。

 

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小鹿田焼の深皿、布巾、芹沢銈介の型染めカレンダー、図録を購入しました。

民藝関係の本は、一階の常設のミュージアムショップのほうに色々あり、そこで『別冊 太陽』を

こちらは写真が大きく綺麗で文字量が多めなのが気に入りました。

 

柳宗悦はどう思うのだろう?

柳宗悦は、東京国立近代美術館に自分たちが集めた民藝の物たちが展示されているのをどう思うのだろう?と思いました。

 

柳宗悦は「日本の眼」で、国立近代美術館(現東京国立近代美術館)を批判した文章を書いています。

国立近代美術館の「現代の眼」という展覧会に対して、「現代の眼」=「西洋の眼」となっていると柳は指摘し、「日本の眼」を標榜するべきと唱えています。

では、柳の考える「日本の眼」はどんなものかというと、柳の思想が難しくて、私にはうまく説明できません。

 

民藝運動はさまざまな人が関わってきた今に続く運動で、どんどん柳宗悦のものではなくなっているのですが、

それでも、柳宗悦の思想をもっと知りたくなりました。

それは、本展に違和感を覚えたからだと思います。

民藝運動の歴史や手法を説明するサンプルとして置かれている感じがして、その物の持つ生き生きとした美が少し損なわれているような…。

それは私のなんとなくの感覚だけであって、うまく言語化できないので、「民藝」という言葉の生みの親である柳の思想に改めて触れてみたいと思ったのでした。

 

ただ、民藝に対するアプローチは色々な方法があってよいと思いますし、民藝の物がこれだけの量、一堂に集められた展示はなかなか無いと思います。

私もできればもう一度行きたいです。

 

ちなみに、「日本の眼」は青空文庫の「民藝四十年」のなかにあります。

www.aozora.gr.jp