2021年3月14日に「第6回ビブリオバトル全国大会inいこま」で行われた、ミシマ社代表の三島さんの講演会「本のこれから~出版社を始めて15年経つ今思うこと」を聴きました。
奈良県生駒市で行われた講演会ですが、事前登録をして、YouTubeで観ることができました。
オンラインって有難い
冒頭、三島さんが、コロナ前はオンラインのイベントに否定的だったけれど、コロナ以降は、あらゆるミシマ社のイベントがオンライン開催だというお話をされていました。
多い時には、月に20回もオンラインイベントをされているのだとか。
確かに、この1年くらいで、ミシマ社だけでなく、オンライン開催のイベントがとても増えたなと感じます。
もしかしたら、この大会もコロナ前だったら、配信はなかったのかもしれません。
今回の講演会はオンライン配信があったので、生駒市の会場へ行くことのできない私も聴くことができたわけで、有難いなと思います。
講演会は90分と、ちょっと長いもので、内容も盛りだくさんでした。
その中から、印象に残ったものを2つ、感想を書こうと思います。
本の返品と持続可能性
出版業界の話の中で、本の返品について話されていました。
本は返品率が高く、40%くらいが本屋さんから返品になるそうです。
そして、本屋さんで売れずに返品された本は、断裁され、焼却処分されるとのこと。
昨今、SDGsやプラスチック袋の有料化など、持続可能性や環境問題が今まで以上に意識されるようになりました。
三島さんは、現在、その視点から本の大量返品の問題を批判するということはあまりなされていないけれど、やがて、変わっていくのではないかと思う、というふうに話されていました。
私自身も三島さんと同じことを思っていました。
そして、講演会でも話のあった、ミシマ社が本屋との直取引で返品を減らしていることや、直取引にかかわる本屋さんの負担を減らす「一冊!取引所」の取り組みについて、次世代を先取っていてよいなと改めて思いました。
前に読んだ、行司千絵『服のはなし』に、政府が食品ロスは問題視しているのに、アパレルの大量処分については統計も取っていないという話が書かれていました。
この本を読んだときに、本の返品問題もアパレルと同じくらい意識されていないけど、やがてどちらも問題になるだろうなと、思いました。
ただ、本もアパレルも文化で、多くの種類から選ぶことができ、広く手に入りやすいことの価値もあるわけで、なかなか一筋縄ではいかぬ問題だと思います。
だからこそ、まずは自分たちで出来ることを取り組んでいるミシマ社はすごいと思います。
論理で説明できること
もう一つ印象に残ったのは、「具体的に論理で説明できることって、もうすでに社会に定着していること」という言葉。
逆に、論理で説明できないけれど、「きっとよくなる気がする」という取り組みが、これからの日本の社会を明るくするのではないかと思う、というふうなお話でした。
「具体的に論理で説明できることって、もうすでに社会に定着していること」という言葉。
ちょっと話がズレるかもしれませんが、自分の人生にかかわるような重要な選択を、最終的に感覚で決めてしまっていることに後ろめたさを感じる私には、救われるような言葉です。
振り返ると、打算して選んだものよりも、感覚で選んだもののほうが、その後の自分には合っているということが私の人生には多かったような気がします。
私が感覚で選んだことを、他の人が合理的ではないように感じ、「もったいない」とか「どうして」などと言われ、とりあえず論理でもって説明しても理解してもらえないこともありました。
なんだか、「きっと、こっちのほうがよさそうだぞ」というふうに、感じるときがあるんですよね。
自信はなく、不安ではあるけれど、ぼんやりといいような気がする。
そんなふうにぼんやりとしていて、いつの日か痛い目に合うのかもしれませんが、ひとまず、この感覚を大切にしようと思います。
また、この話を聞いたとき、昨年読んだ三島さんの著書『パルプ・ノンフィクション』を思い出しました。講演会を聞き逃した方は是非。
ちなみに、その後、ビブリオバトルの大会のほうも拝聴しましたが、その感想は省略します。