「結局、大おじさん何がしたかったの?」のつづきです。
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ヒミが涙を流した理由
インコの王様が積んだ石の積み木が崩れ、宙に浮いた石が破裂したさい、「大おじ」は苦しそうな顔をしながら「早く、時の回廊へ行け!」などと言っています。
これは眞人たちを元の世界に戻すための最期の言葉だったのでしょう。
そして、眞人はヒミとアオサギを連れて時の回廊(元の世界とつながっている戸のある廊下)へ逃げていきます。
その途中でヒミがしゃがみこみ、「おじさま、ありがとう」と言って、涙を流します。
その涙の訳は、「石」の支配から眞人たちを解放するために「大おじ」が犠牲になったことをヒミが理解していたからなのでしょう。
前の考察のとおり、「大おじ」が「石」に心臓を預けている状態であるならば、「石」を殺す=「大おじ」の死を意味します。
ヒミが後継者になれなかったのは何故
「大おじ」が最後の場面でヒミではなく眞人に後継者になることをお願いしたのは、ヒミは涙を流すくらい優しい子なので、積み木を積む=世界の崩壊=「大おじ」の死をお願いするのはかわいそうだと思ったからかもしれません。
もし、塔のなかの世界を存続させたかったのであっても、悪意を身を持って経験し、悪意を克服しようとする眞人だからこそ、自分にはできなかった世界の創造ができると考えたのでしょう。
「大おじ」は「それ(石の悪意)がわかった君(眞人)だからこそお願いしたい」などと言っていました。
塔のなかの世界も悪いけど…
「大おじ」は眞人に「元の世界はやがて火の海になる。それでも戻るというのか」などと問いかけていました。
私自身もみんな戻らなきゃいいのに…なんて思ったのですが、眞人は「元の世界で友達をつくる!」と甘いことを言い出すのです。
「大おじ」は、塔のなかの世界はよくはないけれど、元の世界もよくはないぞ(ヒミは火事で死ぬし、戦争が激しくなる)ということで、眞人たちを帰すことに迷いがあったんじゃないかなと思います。
でも、最後はヒミや眞人の帰りたいという意志を尊重したのですね。
「みんなで塔のなかの世界にいたら安全なのに。でも、元の世界に帰りたがっているし、みんなを帰すなら石にバレないよう世界を崩壊させなくちゃいけない」というふうに思い悩んでいたために、「大おじ」さんがやろうとしていたことがわかりにくくなっていたように思います。
話が変わりますが、眞人が元の世界に帰るというところが「崖の上のポニョ」や「風立ちぬ」とは違う、本作の特徴なのかなと思います。
それについては次回書けたらいいなと思います。