映画「君たちはどう生きるか」でナツコ(夏子?)がいた産屋。
今回は「産屋とは何だったのか?」の考察です。
結論から書くと、ナツコのお腹の中の子の心臓を狙っていた石によって、母子ともに監禁されていたのだと思います。
※以下、ネタバレが続きます。「ハウルの動く城」「失われたものたちの本」のネタバレもあります。
タブーなのはインコたちが食べるから?
産屋に入ったあと、眞人とヒミはインコたちに捕らえられてしまいます。
そして、産屋に入ることはタブーで案内することも同罪だと、アオサギは眞人に伝えます。
タブーを破ったのにもかかわらず、眞人やヒミはこの世界の創造主である「大おじ」から産屋に入ったことを咎められません。
それは「産屋に入るな」が、人を食べるインコやペリカンに対する禁忌だったからだと思います。
インコが「お腹に子どもがいるから食べない」などと話しています。お腹に子どもがいなくなる=産後の母子をインコたちが食べるのを防ぐため、タブーとしたのだと思います。
インコたちに対するタブーだったので、「大おじ」は眞人とヒミを怒ることはなかったのでしょう。
産屋で気絶したのは石のパワー?
産屋で眞人はナツコと帰ろうとしますが、紙垂(しで)のような紙に阻まれ失敗し、気絶します。
ヒミも、眞人・ナツコ・お腹の子を元の世界に戻すよう石にお願いしますが、拒まれ、気絶します。
ふたりとも石のパワーによって気絶させられ、ナツコを元の世界に戻せなかったのだと思います。
なぜ石はナツコを元の世界に戻させてくれなかったのでしょうか?
それは、石がナツコのお腹の子を「大おじ」の後継者として必要としていたからだと思います。
そうすると、そもそも石って何なの?ですよね。
石は「ハウルの動く城」のカルシファー?
石は、ばあやの話から推測するに明治維新の前に空から落ちてきた隕石であるようです。
同じような設定で思い出すのが、映画「ハウルの動く城」のカルシファー。
流れ星だった悪魔のカルシファーは、地上に落ちるときにハウルから心臓をもらったことで生き長らえます。
そして、その対価として、カルシファーはハウルに強い魔力を与えています。
「君たちはどう生きるのか」で、石は「大おじ」に世界を創造できる不思議な力を与えているようです。
ハウルと同じく、「大おじ」も心臓を対価にして石からパワーを得ているのかもしれません。
「隕石の落ちたところに塔を建設したさいに何人も亡くなった」ということがばあやの一人から語られていますが、隕石が建設作業員の心臓を食っていたのかも…なんて思いました。
また眞人が宙に浮いた大きな石のそばにいるとき、心音のような音が効果音としてあったように思うのですが、空耳でしょうか?
なぜ次期後継者が必要だったのか?
作中でインコの王様が石の力が弱っていることを話していますが、それは「大おじ」の寿命が近いことを意味しているのかもと思いました。
石は新しい心臓=ナツコのお腹のなかの子の心臓を欲しがったのだと思います。
ヒミや眞人、ナツコでなくお腹の子がよかったのは、まだ自我がはっきりしていない赤ちゃんのほうが石にとって都合がよかったのでしょう。
産屋の奥は、眞人が「大おじ」の世界で最初に見た墓とそっくりな石があります。
それは、ナツコの出産=お腹の子の死を暗示しているのではないかと思いました。
石について書き足りないところがあるので、また書こうと思います。
「君たちはどう生きるか」を制作するうえで参考にしたといわれているジョン・コナリー「失われたものたちの本」。
この小説では、悪魔的存在に弟の命を差し出す代わりに主人公が異界から元の世界に戻れるという描写があります。
ますます、眞人は弟の命を犠牲にすれば石の世界から脱出できたのかもと思います…。