映画『君たちはどう生きるか』を公開日に観ました。その感想です。
※以下、ネタバレあります。ジョン・コナリー『失われたものたちの本』のネタバレもあります。
パンフレットが販売されていない&うろ覚えで間違っているところがあるかもしれません。
前回、ナツコが眞人に「大嫌い」と言った理由を考察しました。
1.眞人の塩対応がしんどい、つわりで体調も悪い
2.眞人を現実世界に帰らせるための優しい嘘
と2つの理由を考察したのですが、
今回は、
3.「大嫌い」は眞人がナツコに言ってほしい言葉だった
ということを考えていこうと思います。
「大おじ」の創った世界は眞人の夢の世界?
「大おじ」の創った世界は、眞人の思いが影響してくる世界なのではないかと思いました(本題と話がそれるように感じるかもしれませんが、前提として大切なので先に書きます)。
異界に入った次期継承者の思考が異界へ影響するというのは、映画『君たちはどう生きるか』を制作するうえで影響を与えたと言われている ジョン・コナリー『失われたものたちの本』での設定もそうでした。
「大おじ」の創った世界のなかで、眞人が無敵すぎるんですよね…
たとえば、インコたちにさらわれたヒミを追いかけるさいに、塔の木の階段が崩れて下敷きになっても生き残っているなど無敵のヒーローです。
それって自分に都合のいい夢っぽくない?と思う訳です。
眞人は「大嫌い」と言ってほしかった?
前に、眞人にとって「ナツコのことを好きなのか?」という問いが重要なのではないかと書きました。
「ナツコ=父の再婚相手」と「眞人=連れ子」の恋愛関係という倫理的な問題がある状態を回避する一つの方法に、「父の再婚相手」が「連れ子」を拒絶するというものがあると思います。
それがナツコの「大嫌い」という眞人を拒絶する言葉でした。
ナツコが「大嫌い」と言ってくれたおかげで、眞人はナツコを異性として好きかどうか悩まされる必要はなくなりました。
眞人は、母としてのナツコを受け入れることができるようになり、ナツコに初めて「ナツコお母さん」と声を掛けることができたのかなと。
つまり、ナツコが「大嫌い」と言いたかったのではなく、眞人がナツコに「大嫌い」と言われると楽になるから、言われたのではと考えました。
「大嫌い」を言った後のこと
「大おじ」の世界が崩壊したときに、ナツコは眞人と再会します。
「大嫌い」と言った相手に再会するのって気まずいと思うのですが、ナツコはわりとあっさりとしていた感じがするんですよね。
あっさりしていた理由は、
・ナツコには眞人に「大嫌い」と言った記憶が無い。
または
・「大嫌い」は眞人を現実世界に帰らせるための嘘だったので罪悪感が無い。
だと思いました。
ナツコの「大嫌い」含め、眞人が塔の中の世界で経験したことは眞人の抑えられていた気持ちが表出していた。
抑えられていた気持ちとは、「ナツコさんに対するこの胸のドキドキって何? もしかして、俺、恋してる? いやいや、お父さんの再婚相手だしダメでしょ!」。
でも、その思いを巡らせることさえも抵抗のあった眞人は、外発的なこと=ナツコの「大嫌い」という拒絶 によって、母と子の関係の安定を得たのでは…
と思うのですが、どうでしょう?
1回観ただけであまり自信がないので、これはもう1回以上観ないとわからないな…と思いました(笑)
(追記)
その後、2回目観に行き、考えが変わりました。
「後妻と子の恋」という読みはひねくれた解釈かもと思うようになりました。
「なぜ、ナツコが塔に行ったのか」について考察した次の記事が2回目の感想に近いものになります。
↓つづきです。