映画「君たちはどう生きるか」を観ての感想です。
※ネタバレがあります。
パンフレットがまだ販売されていないこともあり、間違っているところもあるかもしれません。
ナツコが塔へ行った理由は、映画の最後まで明らかにされていません。
ばあやのキリコも謎だったみたいで、塔に入るさいに眞人に聞いていましたが、「好きで行ったんじゃなくて、行かざるを得なくて行ったんじゃないか」というようなことを眞人は話していました。
行かざるを得ない理由とは何だったのか?
ナツコが塔へ行った理由を考察していこうと思います。
白装束を着ていた意味
ナツコが行方不明になる前に、眞人が塔へと続く森へ入っていくナツコを一瞬見かけます。
そのときのナツコは白装束です。
白装束って亡くなった人に着せたり、神事で着用したりする衣服です。
どうしてナツコは白装束を着ていたのでしょう?
白装束を着ていた理由は、ナツコが生贄として自身を異形のもの(アオサギなど眞人を狙う化け物)に差し出そうとしていたから、だと思いました。
眞人の怪我との関係
行方不明になる前、ナツコはつわりが苦しく寝込んでいましたが、眞人にしきりに会いたがっていました。
それは自分を生贄として捧げる前に、眞人に一目会いたかったのだと思います。
ばあやたちに促され、しぶしぶ眞人はナツコの部屋を訪れます。
そのさい、ナツコは眞人の側頭部の怪我を心配し、
「傷をつけさせてしまって、亡くなった姉さんに申し訳ない」
というようなことを言っていました。
この怪我は眞人が自傷してできたものですが、ナツコはアオサギたちの仕業だと考えたのかもしれません。
怪我を負う前に、アオサギや池の鯉たちが眞人を異界へ連れて行こうとしている場面をナツコは目撃し、鏑矢で追い払っています。
ナツコのいないところで眞人が怪我を負わされたこと(実際は自傷ですが)を知り、守ることの限界を感じたのかもしれません。
そして、眞人があちらの世界へ強引に連れて行かれてしまう前に、自分が身代わりになろうと決意したのではないでしょうか。
ちなみに、「大おじ」の継承者云々の話をナツコは多分知らないと思うので、ナツコ自身やお腹の子を継承者に…というふうには考えていなかったのでは?と思います。
眞人が「ナツコ母さん」と呼んだ理由
眞人は行方不明になったナツコを探し、産屋で再会します。
せっかく見つけたのに、ナツコは「なぜこんなところへ来たの?」「出て行きなさい」というようなことを眞人に怒るように言っていました。
ナツコにしてみれば、自分が身代わりになったのだから、あなたは元の世界に戻りなさいという意味だったのでしょう。
さらに、このシーンでナツコに「大っ嫌い」とも言われてしまう眞人ですが、初めてナツコのことを「ナツコ母さん!」と呼びます。
命を懸けて守ってくれたナツコを、眞人は母として受け入れたからだと思いました。
「命を懸けて」といえば出産。出産を意識してなのか、産屋のシーンの後に、寝ていた眞人が三角形のトンネルと通って光ある場所に出るというシーンがありました。
「命を懸けて」という点では、眞人の実母であるヒミも同じです。
ヒミは火災で亡くなる運命を受け入れ、元の世界に戻り、眞人を産む決意をします。
自傷するなど生きる希望を失っていた眞人でしたが、二人の母が命懸けで眞人の生を肯定するというストーリーになっています。
そして、眞人自身も命を懸けて二人の母を助けるストーリーになっています。
ナツコが「大嫌い」と言った理由
前に、ナツコが「大嫌い」と言った理由を考察しました。
今回の考察から考えると、眞人はナツコの「大嫌い」を「眞人を現実世界に返すための優しい嘘」だととらえた可能性が高いと思います。
他にナツコに関する謎としては、「産屋に入るのはタブー」がありますね。
またそれについても考察できたらと思います。