群ようこ『福も来た パンとスープとネコ日和』の感想です。
1作目の『パンとスープとネコ日和』の続編。
1作目の感想は別記事に書きました。
1作目も2作目も、ドラマとは、またちょっと違う感じで、面白かったです。
(以下、ネタバレ注意です。)
なかなかペットロスから抜け出せないアキコさん
1作目を読んだとき、ドラマと違って、主人公のアキコさんの感情が揺れ動くさまが、がっつりと書かれているように思いました。
続編の『福も来た』も、ほのぼのだけだけでなく、アキコさんの感情の揺れ動くさまが書かれています。
今回は、お客さんの減少、たろの死によるペットロスでアキコさんは悩み、最後、新しい猫を飼うことになってハッピーエンドとなります。
とくに、アキコさんがたろの死をずっと引きずっている姿が描かれています。
私は、勝手に淡泊な人だと思っていたアキコさんに、こんな愛情の深いところ(とともに、執着が強いところ)があったなんてと思いました。
私は小説やドラマを先読みしてしまう癖があるのですが、『福も来た』というタイトルから、「きっと新しい猫を迎えるのだろうなぁ」と思っていたら、当たりでした。
物語の最後、しまちゃんとその彼氏らしき男性が、かわいそうな境遇の猫を2匹、アキコさんのところへ連れてきます。
そして、アキコさんは、その2匹の猫を飼うことをすぐ決めました。
たろに似た猫ちゃんたちです。
これで、アキコさんが元気になるといいなぁと思いました。
しまちゃんのよさ
今作でも、相棒しまちゃんのよさが描かれています。
しまちゃんは、学生時代にソフトボールに打ち込んだからなのか、持ち前の性格なのか、出しゃばらず、雇われ人としての態度をわきまえている女性です。
私がもし、しまちゃんの立場だったら、雇い主から求められてもいないのに、「こんなメニューどうでしょう?」「もっとこうしたらいいんじゃないですか?」と提案してしまいそうです。
勿論、そういうことを歓迎する雇い主もいるかと思います。
ただ、そのお店は雇い主のお店なのだから、雇い主の色に染めたいはず。
雇い主が、雇った人間の意見にいちいち対応するのは、うっとうしく感じることもあるかもしれません。
出しゃばらないことのよさ、というものを『パンとスープとネコ日和』のしまちゃんを通して知ったように思います。
コーヒーを出さないことを、もどかしく感じる
今作は、喫茶店のママについて、前作よりもさらに掘り下げられました。
喫茶店のママは自分の年齢から、廃業も含め、自分の喫茶店の在り方を考えています。
アルバイトの女の子が急に辞めてしまったり、リフォームを勧める業者が現れたりといった変化のなかで、どういう商売をするべきなのか、ママは答えを出していきます。
それは、新しく人を雇ったり、リフォームせずに、今あるリソースでやっていくというものでした。
これから先が長いであろうアキコさんのお店と違って、ママは終わりを見据えて経営をしています。
前作だと、ママとアキコさんの距離は遠い感じがしたのですが、今作は一緒にレストランに行き、ママの家を訪ねるなど、距離が近くなったように感じました。
また、ママは、アキコさんに経営の悩みを吐露するようにもなりました。
ママがアキコさんを、一人の経営者として認めたからでしょうか。
1作目と変わらず、アキコさんは、ママに気遣い、自分のお店でコーヒーを出しません。
私は、そのことをもどかしく感じてしまいます。
ただ、しまちゃんもそうですが、なんでも「自分!自分!」ではなく、人との関係性のなかで、一歩引くというのも有りなのかもしれないな、と思いました。
『パンとスープとネコ日和』シリーズ、さらに続きがあるようです。
3作目は、『優しい言葉 パンとスープとネコ日和』。
これはまた読まなきゃいけません。