よりよい日々を

毎日がよりよい日々になるように。本・美術・手芸・素敵なモノや街のスポットについて書いています。

手芸エッセイ本『うれしい手縫い ダルマ家庭糸の針仕事ノート』を読みました。

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横田株式会社『うれしい手縫い ダルマ家庭糸の針仕事ノート』(グラフィック社)を読んだ感想です。

 

最近、編み物エッセイ本にハマっていて、3冊ほど読みました。

さらに他の編み物エッセイ本が読みたい!と思ったのですが、これが、ほとんど見つからないのですね。

あまり人気のジャンルではないようです。

 

そのため、今回は「家庭用ダルマ糸」でおなじみの横田株式会社さんによる「手縫いのエッセイ本」を読んでみることにしました。

 

 

いろいろな人の手縫いにまつわるお話

本書はダルマ糸の話も出きますが、大部分は、8名の手縫いにまつわるインタビューが占めます。

 

その8名というのは、

  • 「暮らしの道具 松野屋」  松野きぬ子さん
  • 「atelier naruse」 成瀬文子さん
  • 刺繍作家 樋口愉美子さん
  • 「fruits of life」 大橋利枝子さん
  • デザイナー 月居良子さん
  • 「CHECK&STRIPE」
  • 「YAMMA」 皆川みゆきさん
  • 藍染め作家・背守り蒐集家 鳴海友子さん

です。

これまでどのように手縫いをされてきたか、というインタビューでほっこりとさせられる話ばかりでした。

 

それぞれインタビューの最後には、手縫いでできる小物などの作り方が掲載されています。

また、皆さんの裁縫箱の写真も載っているので、人の裁縫箱ってこんな感じなのか、と思ったり。

 

他に、「ダルマ糸ができるまで」「ダルマ糸の歴史」などといった、ダルマ糸に関する話が載っています。

今どきのお顔のダルマも多いなか、ダルマ糸のダルマは、お顔が渋いままなのがよいですね。

 

雑巾には決まりなんてない

中でも印象に残ったのは、「暮らしの道具 松野屋」の松野きぬ子さんのインタビューです。

 

「暮らしの道具 松野屋」は、谷中にある、有名な生活雑貨屋さん。

昔ながらのトタンのバケツやカゴなどを扱われています。

私も好きで、ここのちりとりを持っています。

 

松野さんは、雑巾を手縫いするワークショップを開かれているそうです。

 

「雑巾の綺麗な縫い方」を教えてくれるのかな?と思ったのですが、こちらのワークショップはそうではないのです。

 

松野さんは次のような言葉を、ワークショップの参加者に語り掛けます。

「雑巾は作品ではなく、暮らしを助ける慎ましい道具。決まりなんてありません。どの色を使っても、どこから縫い始めても大丈夫ですよ」

(横田株式会社『うれしい手縫い』(グラフィック社)より引用)

 

松野さんが雑巾に決まり事なんてないと伝えると、参加者は思い思いに雑巾を縫っていくそうです。

 

私もその言葉を読んで、雑巾を手縫いしたくなり、1枚縫ってみました。

 

雑巾を縫ってみたいと思うのは初めてかもしれません。

我が家には、なかなか雑巾にせずにおいてある使い古しのタオルが沢山あります。

 

雑巾にしようと思うのになかなかしなかったのは、「きちんと縫わないといけない」というプレッシャーを自分が感じていたからだと、松野さんの言葉で気づかされました。

 

私は子どもの頃、「手先が不器用」だと母親に言われて育ちました。

自分自身でもそのように感じていました。

 

あるとき、家庭科の課題で「手縫いの雑巾」の提出が求められ、1枚縫いましたが、「きっとよい評価はもらえないだろう」と暗い気持ちで提出したことを覚えています。

 

そういうわけで、「きちんと綺麗に手縫いができない」→「手縫いしたくない」という気持ちが、ずっと続いていたのです。

 

そんな私でしたが、松野さんの言葉を読んで、そういったものから解放されて、「雑巾を縫ってみたい」という気持ちになったのです。

 

雑巾を1枚、自由に縫ってみて、楽しい感じがしました。

 

でも、松野さん曰く、「雑巾は楽しみを求めて作るものではなく、もっと淡々と暮らすなかでできていくもの」(横田株式会社『うれしい手縫い』より引用)。

 

『うれしい手縫い』という題名から勝手に「手縫いって楽しいよ!」をアピールする本だとイメージしていたのですが、冒頭から、よい意味で期待を裏切ってくれました。

勿論、他の方のインタビューでは、手縫いの楽しさが、ふんだんに書かれているのですが。

 

「楽しみ」「生活の一部」どちらも手縫いの側面なのだと思います。

 

読んでいると、自分でも手縫いがしたくなる、そんな一冊です。