林ことみ『おしゃべりKnit』(グラフィック社)を読みました。
「ニット大好き、ときどきクロッシェ」という副題のとおり、メインは棒針編みの話で、たまに、かぎ針編みの話がある感じです。
本書では、
・林ことみさんの持っている編み物道具の紹介
・記号や作り目など棒針編みの基本の話
・北欧とバルトの編み物の紹介
が書かれています。
道具や棒針編みの基本の話が中心なので、棒針編み好きの幅広い方が楽しめるエッセイなんじゃないかと思います。
編み物道具かわいい!
本書では、林ことみさんがこれまで集められてきた編み物道具が紹介されているのですが、まー、これがかわいいのです!
竹の棒針の先に、木の羊やひよこがついているものや、グミのようなクマ型のバインダー(針先をまとめておくもの)、木目が美しいヤーンホルダーなど。
道具の使い勝手はもちろん大切ですが、見た目がこんなふうにかわいいと、編み物がより一層楽しくなりそうです。
ニット仲間の持ち物からアイディアを得た『マルギットの針ケース』が素敵で、いつか作ってみたいなと思いました。
(画像は、林ことみ『おしゃべりKnit』(グラフィック社)より引用)
本書には、この針ケースの作り方が載っています。
ちなみに、この本はエッセイなので、この針ケース以外に作り方は載っていません。
ちょっとびっくりしたこと
読んでいて、ちょっとびっくりしたことがありました。
本書の冒頭です。
「あなたが初めて編んだ編み物は?」と聞かれたら、ほとんどのニット好きは「人形の服!」と答えるのではないでしょうか。それも、ガーター編みで編んだ服。
(林ことみ『おしゃべりKnit』(グラフィック社)より引用)
えー。人形の服? 他の方はそうなの? と、びっくりしてしまいました。
世代の違いなのでしょうか。
私の周りでは、人形遊びをする年頃に、編み物をする子はいなかったように思います。
友達の家で、手編みの服を着た人形を見たこともありません。
編み物をする同世代を初めて認識したのは、高校生のときです。
家庭科で「自由なテーマで作る」という授業で、マフラーを編んでいる人がいたように思います。
また、アニメや漫画などで、恋人へのプレゼントとして「手編みマフラー」が描かれているのは知っていました。
そのため、私は、「ニット」とか「初めての棒針編み」というと、「マフラー」というイメージがあります。
母から子へ
「人形の服」の話を読んで、母から子への手芸文化の継承について、ぼんやり考えました。
林ことみさんの世代では、きっと人形の服を編むのが一般的だったように、今よりも、家庭に編み物が普及していたのでしょう。
これは私の憶測でしかないのですが、昔と比べると、母から子へ、手芸文化の継承がなされなくなったのだろう、と思いました。
もちろん、昔からその家々での差はあるとは思いますが、全体的に数が減っているんじゃないかなと思います。
家にお母さんがいて、マフラーを編んだり、雑巾を縫ったりしているのを見て育った世代。
マフラーも雑巾も、お店で既製品を買うのが当たり前で育った世代。
家庭内で価値を生み出すのではなく、家庭外で価値を生み出しお金を得て、そのお金で物を買う時代へどんどんなっていっているのでしょうね。
手芸以外の、料理や掃除、食料の調達などにも同じ傾向があると思います。
どちらかを良い、悪いと言おうとは思いません。
その家々で、最善と思うことを選択すればよいと思います。
ただ、私自身は、最近、自分で作りたい欲が高まっていて、自分で何かを作ることを楽しんでいます。
そして、自分と同じように作ることを楽しんでいる方が書かれた文章を読むのも、とっても楽しいです。
これまで読んだ編み物エッセイ本の感想です。