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東直子・穂村弘『しびれる短歌』の感想です。

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東直子・穂村弘『しびれる短歌』(ちくまプリマ―新書)を読みました。その感想です。

 

「入門」というより二人がくっちゃべってる

この本の帯には、次のように書かれています。

恋、食べ物、家族、動物、時間、お金の歌…

歌人二人が語る、楽しいみんなの短歌入門

(東直子・穂村弘『しびれる短歌』帯より引用)

「短歌入門」というと、「短歌とは…」とか、短歌のルールが書かれている本なんじゃないかと推測されるかもしれませんが、この本では、短歌のルールは一文も書かれていなかったんじゃないかというくらいに、短歌の基本的な説明はありません。

私自身は、短歌のルールを教えてくれることを期待せずに、この本を手に取ったので、そこに不満はありません。

 

ひたすら、歌人二人が、恋や食べ物など、テーマにそった短歌を紹介し、あーだこーだ話すという内容です。紹介される短歌は現代に詠まれたものが、ほとんどです。

まるで対談イベントでもあって、それを本にしたかのような内容でした。話し言葉で気軽に読めます。

 

横に並べると見えてくるもの

現代短歌って、わけのわからないものもあるので、お二人の解説で、こういうとらえかたもできるのかと勉強になりました。

 

また、テーマにそって、さまざまな歌人の短歌を紹介しているので、比較すると浮かび上がってくるものがあり、面白かったです。

 

男女によって、老齢の夫婦愛の詠まれ方が違うとか。

お金を詠んだ歌、時代によって、詠まれ方が違うよねとか。

 

ちくまプリマー新書って中高生向けじゃなかったっけ

短歌の本って、需要があまりないためか、お値段が高いことが多いのです。

この本は、普通の新書の値段で手に入り、うれしい。

 

ちょっと話は変わりますが、

この本は、ちくまプリマー新書というシリーズから出ています。

ちくまプリマー新書は、私が創刊当初の15年前に手に取ったときは、たしか「中学生や高校生を対象にした新書のシリーズ」という名目でした。

その頃出ていたものを何冊か読みましたが、「先生が教えます!」というノリで書かれているものが多かったような。

 

話を戻して、『しびれる短歌』の冒頭で紹介された歌を見てみましょう。

したあとの朝日はだるい 自転車に撤去予告の赤紙は揺れ  岡崎裕美子

(東直子・穂村弘『しびれる短歌』より引用)

 

おいおい、「したあと」って…。

私自身はいい大人なので気になりませんが、「中高生を対象」の肩書はどこへ行った…と思いました。

ただ、もし、中学生の自分がこの本を読んでいたら、ませた子だったし、短歌って今でも詠んでいる人いるのか、自由だな、面白そうと、興味深々だったかも。

 

『しびれる短歌』以外に、最近、ちくまプリマー新書で手に取った本でも、「中学生・高校生を対象に」という感じが薄れたなと思うことがありました。たまたま手に取った本がそうだったということかもしれませんが。

結局、大人の読者のほうが多くて、中高生を対象にするのは止めたのか?

それとも、大人が想定していた「中高生という読者像」は、あまり役に立たなかったのか?

などと、思うのです。

 

 

話がちくまプリマー新書の話になっちゃいましたが、『しびれる短歌』は現代短歌好きな人、興味がある人にはおすすめです。