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オリンピック開会式の考察その1「大工は何を表していたのか?」

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東京2020オリンピック開会式の考察です。

 

開会式の演出について、「個々のパートがバラバラでつながりがわからない」という声もあるようですが、

個々のパートをつなぐ大きなテーマがあると思います。

具体的には、

  1. コロナ禍でのオリンピック開催
  2. 平和への祈り
  3. 競技の紹介
  4. 競技会場・名所の紹介

というテーマで進行されていたように感じました。

 

今回は、前半でわかりにくいパートだったと思う「大工のパート」を中心に考察します。わかりにくい原因は、わざと解説を入れなかったからでは?と推測します。

 

わかりにくい大工のパート

開会式の最初の部分がコロナ禍でのアスリートの姿を表現していることは、NHKでの解説もありましたし、みなさん、わかったのではないかと思います。

 

赤い紐を使った前衛ダンスところなどは解説がないと、わかりにくいですよね。

これは、「アスリートたちの筋肉や血管、コロナ禍での葛藤を表している」という解説がありました。

 

赤い紐以外に前半でわかりにくかったのが、大工のパートだと思います。

森山未來による、コロナ犠牲者に捧げるパフォーマンスの次に披露されたパートです。

 

このパートでは、大工たちが作業する様が演じられています。

大工が着ているはっぴの背中には、「東京」の文字。

NHKの解説では言及されていませんでしたが、この大工のパフォーマンスは、東京オリンピック組織委員会やその関係者によるオリンピックの準備を表現していると思います。

 

俳優の真矢ミキが大工の棟梁でしたが、男女平等への配慮というよりも、女性の棟梁が東京都知事の小池百合子を表しているのではないかと思いました。

 

火消しは皮肉?

また、この大工のパートでは、大工のほかに纏(まとい)をもった火消しが大勢いました。

これは、東京オリンピックが数々の問題で炎上しまくっていたのを表したものだと思います。つまり、炎上をどうにか沈静させようとする組織委員会…。

 

やがて、大工以外の衣装に統一感のないダンサーがどんどん増えていきます。

これは、組織委員会以外にボランティアなど、オリンピックの準備を手伝う人が増えていったことを表していると思います。

 

みんなの協力があって、五輪の輪ができあがりました。

この輪は、1964年の東京五輪で選手たちが持ち寄った種から育てられた木が使われているそうです。

1964年のレガシーを継承するものとして、2021年のオリンピックは始まったことが表されています。

この章の名称も「A LASTING LEGACY」となっています。

 

嫌われ者なゆえに、解説をわざとしない

解説で「大工=東京オリンピック組織委員会」を説明すれば、【コロナ禍でのオリンピック開催】というテーマがわかりやすかったと思います。

コロナ禍で葛藤する選手たち→コロナの犠牲者への追悼→オリンピック準備(大工のパート)という流れになっています。

 

解説で「大工=東京オリンピック組織委員会」を言わなかったのは、意図的ではないかと推測します。

組織委員会、大変嫌われていますから、それを開会式で表現したとなると「莫大な予算で自分たちを表現するなんて…」と批判されかねません。

 

おそらく、NHKが開会式を解説をするにあたって、あらかじめ組織委員会から原稿の基になる資料を与えられていたと思います。

そして、組織委員会側は、批判を受けないように「大工=組織委員会」をわざと資料に記載しなかったんじゃないかと思います。

火消しなんて、皮肉ですしね。

 

なぜ、タップダンスか?

この大工のシーンでは、タップダンスも披露されました。

北野武監督の映画「座頭市」も連想されますが、ジョージ・フロイドさんの死亡事件を発端にした黒人差別の抗議運動が表現されていると思います。

 

タップダンスはアメリカ南部の黒人発祥のダンス。

黒人奴隷たちが、労働後にドラムを鳴らすことを禁止された代わりに、足を踏み鳴らしたのが起源として知られています。

 

同時に、この開会式のテーマである「多様性と調和」を、日本の伝統とタップダンスをミックスすることで表現しているのだと思います。

この異文化ミックスは、開会式の最後の「歌舞伎×ジャズ」でも使われました。

Twitterを見てみると、日本の伝統文化をアピールすることを期待していた人には、この異文化ミックスは不評だったようですね。

 

「日本!日本!」ではなく、「コロナと多様性と調和」

今回の開会式をいまいちだと感じている人のなかには、日本の文化の紹介が弱いという意見があるようです。

当初の演出責任者だったMIKIKOによる開会式案だと言われているものは、『AKIRA』の主人公やマリオなど日本のキャラクターが登場し、エンタメ色の強いものだったようです。

 

それがコロナ禍での開催になり、かつ、開催そのものに強い批判があるなかで、開会式の内容もコロナを感じさせるものに変更したのでしょう。

「多様性と調和」というテーマも含め、開会式のテーマの変更の主導が、東京オリンピック組織委員会によるなのか、IOCによるものなのかは謎です。

 

「日本オリンピック」ではなく、「東京オリンピック」

コロナ禍を表現することに比重を置きつつ、前半のパートでは、大工、火消し、木遣り歌といった、わりと「地味な」日本文化が紹介されました。

今でこそ「地味」という印象ですが、江戸時代には「大工・左官・鳶(火消し)」が、「華の三職」と呼ばれたそうです。大都市江戸を築き上げた、粋でいなせな職業だったからでしょう。

 

政治の影響も噂されていますが、「日本オリンピック」ではなく「東京オリンピック」であることを考えると、大工、火消し、歌舞伎というチョイスは妥当だと私は考えます。

 

 

長くなりましたので、大工のパートの次の「選手入場」については、別記事で書こうと思います。

次は、なぜ、衣装やプラカードが漫画をモチーフにし、BGMはゲーム音楽なのかを考察しようと思います。

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