東京国立博物館で開催されていた特別展「きもの KIMONO」の図録を購入しました。
本当は展覧会へ行きたかったのですが、今回は、図録のみです。
東京国立博物館のミュージアムショップのECサイトより購入しました。
豪華な図録
届いて驚いたのが、厚みが結構あること。全402頁です。
サイズもA4変形で、大きい図録です。
他の方のブログに、「きもの展の図録は重くて持ち帰るのが大変だから、ネットから購入した方がよいかも」などと書かれていましたが、確かにそのとおりかもと思いました。
タイトルは金の箔押し。表紙は布張り、柄の部分はシールです。
展示品の写真ページは、オールカラー。中扉は色紙を使用。
贅沢な図録だと思います。
販売価格は税込3,000円。
人気の展覧会の図録でなかったら、実現しないような価格設定だと思います。
感想
特別展「きもの KIMONO」の展示品の感想です。
時代は移り変わっても
着物そのものや着物が描かれた絵画から、着物の移り変わりを知ることができる展示構成になっています。
一番古いもので16世紀の着物があり、虫に喰われずによく残っていたものだと思いました。
とくに見ごたえがあったのは、安土桃山時代から江戸時代の着物で、さまざまな意匠が施された着物は、染め、刺繍、織りなどの豊かな技術があってのことだと思います。
拡大された写真では、柄の細かさに驚かされます。
写真は特別展「きもの KIMONO」図録より
天保の奢侈禁止令によって、鹿の子絞り・刺繍・金糸の装飾が禁止されても、染めの技法によって、まるで絵画のような着物が作り出されるなど、着飾ることへの飽くなき欲求を感じました。
かっこいい「火消半纏」
女性の着物だけでなく、信長・秀吉・家康といった歴史上の人物が着ていたとされる着物や「若衆風」ファッションなど、男性の着物も紹介されていました。
なかでもインパクトがあったのが、「火消半纏」。
写真は特別展「きもの KIMONO」図録より
火消し(江戸時代、消火活動をしていた人々)が着ていた半纏のことなんですが、とっても派手なんです。
写真の、鯉などの派手な柄がある側は、「火消半纏」の裏地です。
表は、紺の木綿で刺子が施された、そこまで派手じゃない感じのもの。
火事へ向かう火消したちは、半纏の上から水をかぶり、消火活動にあたりました。
無事に消火が終わると、派手な裏地を表に着て、帰ったのだとか。
街にそういう人たちが今いたらちょっと恐い感じもしますが、生活を楽しんでいる感じでいいですね。
今でも、男子小学生の家庭科で作るエプロンの柄に、ドラゴンがあるらしいのですが、火消半纏にも竜の柄があって、かっこいいよねと思ったり。
高畠華宵「移り行く姿」
高畠華宵(1888-1966)は大正から昭和にかけて活躍した挿絵画家として知られていますが、昭和6年頃から日本画の作成をするようになりました。
華宵の日本画の中で一番の大作というべき作品が、昭和10年に完成した六曲一双屏風「移り行く姿」です。
写真は特別展「きもの KIMONO」図録より
明治・大正・昭和の衣装を身にまとった女性が60名も。
季節の移り変わりも同時に表しています。
洋装や水着の女性もいますが、和装のほうが多い感じですね。
挿絵画家の頃から、多くの女性とその衣装を描いてきた華宵の集大成だと思います。
「移り行く姿」は、津村順天堂(現・株式会社ツムラ)の初代社長の依頼によって描かれたものでした。
華宵は若い頃から津村順天堂の広告の挿絵を手掛けているので、そのつながりでしょう。
今でも個人蔵とのことなので、津村家が持っているのでしょうか?
私は華宵が好きなんですが、なかなか観る機会のない作品でしたので、生で観たかったなと思いました。
図録って買うかどうか、判断が難しい
話が変わりますが、図録って、買おうかどうしようか、なかなか判断が難しいんですよね。
図録は通常の書籍より場所をとるので、しょっちゅう図録を買っていると、図録地獄(本棚が足りない)になりそうです。
図録は通常の書籍より値段が高いものが多いですし、せっかく買ったのに後で全然読み返さなかったというものもあります。
他方で、あの図録買っておけばよかったと後悔するものもありました。
たとえば、2018年に東博で開催された「縄文―1万年の美の鼓動」の図録は手元になく、後悔しているものの一つです。
こちらの図録、新品は売り切れで、中古は1万円以上の高い価格で販売されています。
図録のすべてが高値になるというわけではなく、神保町の古書店の軒先で、図録が投げ売りされているのもよく見かけます。
図録を購入するかどうかの見極めるすべが欲しいなと思います。まだ、判断基準は見つかっていません。
今のところ、今回購入した特別展「きもの KIMONO」の図録は買ってよかったと思います。