少し前に、自由学園 明日館(東京・池袋)に見学に行ってきました。
明日館は、「みょうにちかん」と読みます。
自由学園明日館とは?
自由学園は、ジャーナリストの羽仁吉一・もと子夫妻により、大正10年に設立された女学校です。
羽仁夫妻は、キリスト教の精神に基づいた教育を行う学校をつくろうと、自由学園を創設しました。
そして、この自由学園の校舎の設計をしたのが、フランク・ロイド・ライト。
近代建築の三大巨匠の一人として知られているライトは、当時、帝国ホテル建築のため来日していました。
羽仁夫妻が、友人の建築家 遠藤新を介して、ライトに依頼し、実現しました。
後に増築された講堂部分は、遠藤新の設計であるといわれています。
というわけで、「自由学園 明日館は、どんな建築なのか?」を楽しみに訪れました。
休日見学日に行ってきた
自由学園明日館は、月1日、「休日見学日」があります。
休日見学日以外の土日祝日は、結婚式など施設の貸し出しのため、見学ができない日もあるようです。
貸し出しがなければ、休日見学日以外でも土日祝日に観られるみたいです。
私は念のため、休日見学日に行きました。
池袋駅メトロポリタン口から徒歩5分ほど、住宅街の中にあります。
ガイドツアーおすすめです
職員の方による、ガイドツアーに参加しました。
入場するとき、パンフレットもいただくのですが、ガイドを聞いて、「へー、そうなのか」と大変勉強になりました。
たとえば、講堂の隅に、昭和初期の洋式トイレがあること。
当時のままの姿で残されているトイレは、貴重みたいです。
あんまり使われていなかったようで、汚さの程度は、ギリギリ、今でも使えるかも?
見逃しそうなところだったので、ガイドを聞いてよかったです。
今とは違い、ペーパーフォルダーが、右後ろにありました。
後ろに向かって座り、用を足していたのでしょうか。
学校としての寿命は短かった
自由学園 明日館、学校としての寿命は短かったようです。
1921年に建てられた自由学園ですが、学校としての機能は、1934年に東京都東久留米市へ移転しています。
つまり、学校として使われた期間は、たったの13年。
その後は、卒業生のための施設や、戦時中は大蔵省主税局として使われていたようです。
移転の理由は、生徒数が増加して、手狭だったから。
羽仁夫妻の教育理念に賛同する保護者が多かったのですね。今でも、自由学園は現役の学校として東久留米市にあります。
自由学園明日館って、思っていたよりもこじんまりとした建物でした。
一部が2階ですが、ほぼ平屋ですし、小学校というより、やや大きな保育園の規模です。
もう一つの理由というか、当時の明日館は、雨漏り・湿気など、建物の管理が大変だったみたいです。
低予算・短い工期で建てられた建物であったため、劣化も早かったようです。
平成になって、国の重要文化財に指定され、大規模な保存改修工事が行われて、今の美しい姿になりました。
改修前の明日館の写真を見ましたが、今の姿からは想像できないくらいボロボロ。
これを今の姿にするには、お金と労力がかなりかかったことが容易に想像できます。
他方、フランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテルのほうは、建て替えとなっています。一部は移築されて、愛知県犬山市の明治村にあります。
明日館は、よくぞ!残してくれた!と思います。
建築の感想など
ガイドツアーを聞いた後、自分で校舎・講堂を回りました。
休みの日とはいえ、見学者は少なかったです。
こじんまりとしているので、じっくり観ても、見学だけなら所要時間は1時間もいらないのではないでしょうか(ガイドツアーは別に30分強くらいだったかな)。
外玄関から、廊下の途中まで、大谷石(おおやいし)が使われています。
下駄箱は一応あるのですが、外と内がつながっている感じが、土間みたいでおもしろい。
大谷石は、栃木県宇都宮でとれる、柔らかく加工がしやすい白っぽい石です。
前に、山の中にある採石場跡(大谷石資料館)まで行ったことがあるのですが、RPGのダンジョンみたいで楽しかったです。
フランク・ロイド・ライトは、大谷石が好きだったみたいですね。
帝国ホテルにも使われています。
明日館は低予算だったので、同時期に建てられた帝国ホテル用の資材の大谷石をもらってきたんじゃないか疑惑があるようです。
やや暗い廊下の先に…
狭くて、やや暗い木の廊下部分を通った先に、大きな窓から光を取り込み、天井の高い解放感のあるホールが待っています。
外から見える印象的な窓の部分ですね。
フランク・ロイド・ライトは、本当はステンドグラスを使いたかったみたいなんですが、低予算ということで、木枠でうまいことデザインしたみたいです。
これはこれで、いい感じですよね。
反対側の内側は大谷石の暖炉。
冬季には、暖炉を焚く日もあるみたいで、観てみたい…!
喫茶も!クッキーも!
他の方がいらしたので写真はないのですが、ロビーの上の2階は食堂です。
通常の学校建築とは異なり、校舎の中心が食堂になっているのが、明日館の特徴なんだとか。
羽仁夫妻は、全校生徒が集まってあたたかい昼食を食べることを重視していたそうです。
給食は、当番の生徒が作っていました。
調べたら、今でも自由学園では当番の生徒(保護者も手伝う)が給食を調理しているみたいで驚きました。
食堂だった場所は、現在は、喫茶スペースになっています。
入場料400円に、+200円で焼き菓子&コーヒー又は紅茶がいただけます。
見学後のちょっとした休憩にぴったり。
自由学園明日館に行った際に、もう一つお楽しみが、明日館のショップで購入できるお土産のクッキー缶。
「自由学園食事研究グループ」という自由学園の卒業生さんたちによる、手作りクッキーです。
素朴な、やさしい味、サクサクで、とっても私の好みでした。
他にも、感想は書き出すと止まらなくなりそうなくらいあるのですが、このくらいで。
こじんまりとしていますが、見どころ満載だし、静かでゆっくり観られるので、おすすめです。
昔、明日館の近くに知り合いが住んでいて、よく行っていたのですが、こんな場所があるとは当時、知りませんでした。
あの頃、知っていたらなと思いながら、帰路につきました。