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「開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎―」展の感想

2020年に東京ステーションギャラリーで開催された「開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎―」(以下、「バウハウス展」)に行ってきた感想です。

「バウハウスとは?」「バウハウスでは、どんな教育を行っていたのか?」「常設で、バウハウス関連のものが観られる場所」についてなど。

 

そもそも、バウハウスとは?

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画像はWikipediaより(パブリック・ドメイン, リンクによる)

 

デザインや家具、建築が好きな人なら、どこかで聞いたことのある「バウハウス」。

しかしながら、「バウハウスとは、何ぞや?」と聞かれると、うまく答えられない人も多いかも。私もそうでした。

 

簡単に、バウハウスを説明すると、

  • 1919年に、ドイツ・ヴァイマールに開校した造形学校
  • 「Bauhaus(バウハウス)」とは、ドイツ語で「建築の家」
  • 初代校長は、近代建築の四大巨匠のヴァルター・グロピウス
  • グロピウスは、「すべての造形活動の最終目的は、建築である」と考えていた。
  • カンディンスキー、パウル・クレーなど、著名な芸術家が講師
  • 世界初のパイプ椅子であるワシリーチェアなどが作られ、モダニズムデザインの先駆けとなった。
  • バウハウスはナチスの弾圧により、1933年に閉校。しかし、その後もアートやデザインに影響を与えている。

というのが、基本的な情報かと思います。

 

 

そこで気になるのが、「バウハウスで、どんな教育を行っていたのか?」「バウハウスのデザインの特徴ってあるんだろうか? あるなら、どういうものなんだろうか?」というところですね。

今回のバウハウス展を見て、どんな教育を行っていたのか、そして、デザインの傾向も、浅い理解ではありますが、少しわかったような気がします。

 

バウハウス展の全体の感想

まず、今回の展示では、たとえば、印象派の名画の展覧会のように、展示物を観て美を感じるというよりも、説明文を読み、展示物を観て、「へぇーこういうことやってたんだ」と理解するような展示内容でした。

中には、観ていて美を感じる物もあるのですが、デッサンや色見本のようなものが多いので、どちらかというと、勉強になるなーという感想を持つものが多かったです

 

また、バウハウスで教えられていた内容が紹介されているといっても、「これでわかったぞ!」となるわけではありません。

 

たとえば、パウル・クレー、カンディンスキーの講義の内容も紹介されていましたが、難解で、どういうことなのだろう?と私にはさっぱりでした。

カンディンスキーの造形講義を受けた日本人留学生・山脇巌によると、「カンディンスキーの理論は2年目頃にはよく合点がいった」とのこと。

残念ながら、一朝一夕に習得できる類のものじゃないのです。だからこそ、学校に通う価値があったのです。

 

今回の展示は、バウハウスに2時間の体験入学したみたいな感じで、こんなことをするのねーという、浅い理解で終わりました。

さらに詳しく知りたい方は、こちらの本がミュージアムショップで販売されてました。

 

以下、バウハウスでどんな教育を行っていたのかという私なりの理解と、展示品の中で、印象に残ったものについて書こうと思います。

 

体操もしちゃう「予備課程」

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画像は、展覧会チラシより

 

上の画像は、バウハウスのカリキュラム図。

真ん中が、最終目的であるとされた「BAU(建築)」で、外側から真ん中に向かっていくイメージです。

 

一番外側の円が、「VORLEHRE(予備課程)」です。

バウハウスに入学すると、半年間(後に1年間)、予備課程で勉強します。

 

パウル・クレー、カンディンスキーは、予備課程の学生に造形教育を教えていました。

 

バウハウス展では、他の講師陣の講義も紹介されていて、印象に残っているのは、アルバースの「紙による素材演習」と必須科目の「レタリング」です。

 

紙による素材演習

紙による素材演習では、紙を「切る・折る・曲げる」ことのみが許されていて、貼ったり、切ったりすることはできません。

しかし、そういった制限のもとで、作成することで、紙(素材)の特性を最大限生かすことができます。

 

素材を最大限に生かすというのは、その後の専門分野の過程でも、重要となった考えだと思いました。

 

必修科目「レタリング」

レタリングとは、文字のデザインのことです。

それまで、印刷に使われる文字は、ブラックレターといわれる装飾的なデザインの文字が主流でした。しかし、この時代、国際化の中で、文字のデザインに、よりわかりやすくシンプルなものが求められるようになります。

 

シンプル・合理的であることは、他のバウハウスのデザインにもつながる考えだと思いました。

 

レタリングが必須科目であることに、最初、ピンとこなかったのですが、文字って色々なところに使われますから、さまざまな分野で文字のデザインって必要になってくるかもと思いました。

 

バウハウス展のチラシに使われている文字も素敵ですよね。

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このチラシのデザイン、「2020年展覧会よいチラシで賞」をあげたいです。

 

このほかにも、デッサンする前に柔軟体操させる先生や、いろいろな素材に触れることができる触覚板など、ユニークな教育がされていたんだなと、思いました。

 

工房で、マイスターに教わる!

バウハウスの学生は、予備課程を修了すると、展覧会に自分の作品を出品します。

そこで認められると、各専門分野の「工房」に入ることが許されます

 

先ほどのバウハウスのカリキュラムの図だと、各専門分野は、真ん中の「BAU」と、その円を取り囲んでいる、HOLZ(木材)、METALL(金属)、GEWEBE(織物)、FARBE(色彩)、GLAS(ガラス)、TON(粘土)、STEIN(石材)のところです。

実際には、家具・木彫・陶芸・金属加工・織物・建築などのように、工房が分かれていたそうです。

 

バウハウスは、たまに「美術学校」だと紹介されていることもあります。

美術学校というと油絵や彫刻のイメージが強いような気がします。

バウハウスの専門課程を見ると、もっと実用的な感じですので、工芸を教えていた学校というほうが、イメージしやすいかもしれません。

 

工房では、1~2名の「マイスター」が先生です。

工房、マイスターという名称が、ドイツっぽいですね。

 

工房では、一連の工程の習得のため手工業を体験させながらも、工業製品化を意識した作品作りが行われたそうです。

また、既存の造形にとらわれないデザインや、新しい素材を使うことも積極的に行われました。

 

世界で最初のパイプ椅子

バウハウス展では、各工房で誕生した作品が、紹介されていました。

中でも、印象に残ったのは、マルセル・プロイヤーのクラブチェア(ワシリーチェア)です。

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画像は、展覧会チラシより

 

クラブチェアは、世界で最初のパイプ椅子だと言われています。

「ワシリーチェア」という愛称は、ワシリー・カンディンスキーが好んで座った椅子であったことに由来しています。

 

プロイヤーは、ワシリーチェアの他にも、多くのパイプ椅子を作成しました。

初期のものより、さらに材料に無駄のない、シンプルなデザインへなっていった感じでした。

 

下の画像のS32も、プロイヤーのパイプ椅子ですが、ワシリーチェアよりも、さらにスッキリとしたデザインですね。 

 

プロイヤーのパイプ椅子は、今でも新しいものが製造され、販売されています。

素材に無駄がなく、合理的なデザインだけれど、造形が美しいことが、長く愛されるデザインのポイントなのかなと思います。

 

バウハウスを常設展で観られる場所

バウハウス展は、2020年9月6日で終了しましたが、常設でバウハウスを知ることができる場所があります。

 

それが、「ミサワバウハウスコレクション」(東京・杉並区)。

住宅メーカーのミサワホームのコレクションで、なんと、バウハウス関連の作品を1,500点も所蔵しているとのこと。

 

今回の展示も、その多くがミサワホームのコレクションからやってきたものでした。

その多さに、作品リストでは、ミサワホーム所蔵の表記が省略されるほど。

 

www.bauhaus.ac

 

余談ですが、実家がミサワホームで建てた家なんです。

ミサワホームは、バウハウスのデザインを理想にしているようなんですが、一体、あの家のどこにバウハウス的な要素があったのかは、謎です。